政界から一般家庭へ~広がる迂回融資の懸念、その手口と違法性

本来、信用情報の問題などで融資を受けられないはずの個人や法人(会社)に、資金を回すために、健全な信用情報の個人や法人を窓口として貸付を行い、そこから更に、融資を受けられないはずの個人・法人へと式をまわすことを「迂回融資」といいます。刑事罰の対象となる、不正融資です。
かつて、バブル最盛期に盛んに行われた迂回融資は、主に、地上げの資金を調達するなど、不動産バブルの申し子としての利用が主たる目的でした。旧住専事件や、千葉銀行事件など、迂回融資の典型例として社会問題となった事件の多くは、不動産がらみの案件であることも、不動産と金融という業界の根深いつながりを現しています。
金融業界内での迂回融資という慣習は、それが不正融資であることを知りつつも、金融機関の内部だけで処理されて、実際は表面化していないと話す識者もいます。政界など巨額の資金を動かす局面では、実は慣例として処罰対象になるような不正処理は継続的に行われている、という見方が強いようです。
しかしながら、近年こうした迂回融資の手法は、金額が縮小される一方で、一般家庭へと拡大しつつあるようです。その原因のひとつが、改正化資金業法の施行です。
グレーゾーン金利が撤廃され、貸金業者側の資力が一定以上であることなどが盛り込まれたことにより、資金繰りが苦しくなったところへ、更に、過払い金請求が殺到したことで、かつては「大手金融」と呼ばれていた消費者金融業者が次々と倒産しことは、記憶に新しいところでしょう。総量制限などの規制がかかったことで、諸費者金融の新規顧客獲得が困難となったことも、小規模な迂回融資を生み出す背景となっているようです。
消費者金融における迂回融資は、多重債務や自己破産歴があるなど、いわゆるブラックリストの信用情報を持つ人物への貸付を、身内や友人などを介して行う形をとるものが目立ちます。この場合、ダミーとなる融資対象者には、消費者金融側からは「キャッシュバック」などの提案はあるのですが、実際には何も行わず、そのまま騙される被害が多数報告されています。早い話、夫名義で無職の主婦が生活費以外の借り入れを行っても、立派な迂回融資であることには変わりないのですから、借りる側もよほど気をつけて認識を改めなくてはならないでしょう。
今後は、末端の利用者である、一般の市民にもこうした迂回融資によるトラブルは増加していくと見られており、国の充分な情報伝達や、処罰の対象となる不正融資であるといった情報提供も求められます。

閉じる