見せ金、書類偽造、迂回融資~不正融資の影に潜む違法行為

融資を受ける資格や価値のないものを、あたかも融資可能案件であるように見せかけて金品を得ることを「不正融資」といいます。
巨額の現金が動くことが多く、大きな事件になったりします。刑事事件としては詐欺罪に当たり、取締役などの立場にある人がかかわる不正融資では特別背任罪が適用される場合もあります。東証一部上場の大企業や、大手銀行がこうした不正融資で破綻すると、損害額も社会の受ける打撃も大きいため、一社ないしは個人の問題で済まされないケースが少なくありません。
不正融資を取り付けるために、複数の企業や個人に協力させて正統な融資であるように見せかけるケースも多数存在します。こうした場合怖いのは、協力をしている個人や企業が、全く詐欺の片棒を担いでいるという自覚がないことが多いという事実です。もちろん、持ちかけるほうが「詐欺を手伝って欲しい」などというはずはありませんが、騙されて協力するほうにも、見抜けず騙されてしまう甘さがあることも事実です。故意はなかったにしろ、巨額の不正融資事件に巻き込まれてしまって、大きな損害をこうむることになるのでは、割に合いませんから、不正融資の特徴を概要だけでも抑えておくことは、防犯上望ましいことと考えます。
身近な不正融資の事例は、不動産売買の「見せ金」です。工事資金を得るために、資力のない地主に返済能力があるように見せかける目的で、短期間だけ通帳に高額の現金を預け入れて、融資の審査を通します。審査が通ったらすぐに現金は引き出してしまい、多くの場合少額の「手数料」名目の上乗せをして返金します。発覚すれば詐欺ですが、売却益などで早期に返済をできるよう調整がなされて、発覚に至るケースは少ないです。
銀行員など金融機関の職員が主役になる場合もあります。融資先である会社と協力して決算書などの、企業の業績を証明する書類の偽造が行われる場合です。業績を実際より良く見せかけたり、会社所有の不動産などの資産価値を高く見積るなどして、本来不可能な額の融資を行うものです。バブル期に多く発生した株や不動産売買に関わるものが、このパターンが多く、著名な事件では、平和相互銀行不正融資事件などがあります。
また「迂回融資」というものもあります。これは、既に破綻寸前の貸付を受けていて、焦げ付きの危険がある会社や個人に、直接でなく、無関係に見える第三者を介して過剰な貸付を行うことで、信用保証の範囲内に収まっているかのように見せかけるものです。この場合、第三者が詳細を把握でいきていないまま、破綻した時は巨額の返済義務を負う事になるケースも少なくありません。
甲府信用金庫の迂回融資事件では、高齢のスーパー経営者である被害者に無断で口座の開設を行い、承諾もなしに高額の貸付を行うといった信じられないようなケースでした。返済請求が被害者本人になされたことで事件が発覚しました。被害者が娘の交際相手に騙され白紙委任状に印を押したものが、他人の間違いだらけの書き込みで口座開設から融資までを通過してしまったのです。この事件から分かるように、白紙委任状などは危険なサインと考えて、絶対に渡さないようにするべきでしょう。

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