「その融資本当に必要ですか?」自己破産者の「懲りない心理」

借金を重ねて、多重債務に陥る人物には、一種の共通した特徴が見受けられる場合があります。必ずしも、全ての自己破産者がそうであると言うわけではありませんが、「何度繰り返しても、懲りずに借りては同じ失敗を繰り返す」「家族にどれほど迷惑をかけても、また、借りてくる」というようなタイプの自己破産者の心理には、一定の「繰り返し」を行ってしまう要因が隠れているといえます。
凄まじい事例で、会社倒産後、自身も自己破産。更に妻をダミー社長に会社を興して、再び破綻、今度は妻も自己破産、それでも懲りずに母親をダミー社長に新会社設立して、一斉解雇した社員の給料から社会保険料、源泉徴収税はもちろん、売掛金から、カードのガソリン代まで溜まり放題で総額1千万円!というのを経験したことがあります。
ご本人は「仕方ないじゃん、払えないんだもの。会社なんか、また起こせばいいんだ。」と言います。リストラされた社員たちが、新会社を設立したおかげで、雇用保険を受け取れない状況にあっても、「会社を作らなければ、みんなに給料を払ってやれん。」と言います。無責任極まりなく思える元・社長の、このような発言は、実は大真面目です。本人は全く悪意など微塵も持っているつもりもなく、自己破産を繰り返していることで、借入先に迷惑をかけた自覚さえもてていません。一体、どうしてなのでしょう?
今回は、「借金」という行為を心理面から見てみましょう。
借金は本来「支払いの充当」など、何かしらの「目的」で行われるものです。しかしながら、反復的に払えもしないような借金や買掛金を累積させる行動には、そもそも「払われるべき対象」が実質的に存在していなかったり、「返済のための返済」のような、そもそもの借り入れの目的が借金そのものであったりすることが珍しくありません。
すなわち「支払」が目的なのではなく「借金をしている状況」が目的となってしまっているのです。人によっては、「支払期限が近づくと、ドキドキしてくる」というのですが、その「ドキドキ」は、ほぼ「わくわく」です。支払い方法を考えることそのものが、借金の目的になってしまっています。
こうした人物の多くは、何かしら別種の問題も並存していることが多いのですが、果たしてこの社長は、アルコール依存症でした。すなわち、物質依存症に加えて、「借金」という行為依存をも併発させているのだと言えます。元・社長にとっては、「返さなくてはいけない借金が、常にある状態」で、自分に一定のストレスがかかる状況が、お酒を飲む理由、お酒を止められない理由、会社を作っては潰す理由となっているとも言えます。
アルコールや薬物などの依存症は脳の病気の一つであって、脳内伝達物質の生成サイクルが薬物の影響で変化し、重度の依存症となると、脳そのものにも変質が起きています。これらは、専門的な知見のある医師による精密な検査と臨床の観察がないと判断は出来ません。しかし、現在の日本の法律では、このような病歴は貸付を断る理由にはならないため、「借金」という行為に依存している人物が、病気の症状として自己破産や身内を巻き込んだ倒産劇を繰り返す原因の一つになっているのかもしれません。

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